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by無い内定(樺太) 今思えば、なんでこんなことになってしまったんだろうか… なんで私にだけ不幸なことが起きるんだろう… なんであの時私は……… 私は大学で高校時代のようなウマの合う仲間も出来ずに常に一人でいた。 そんな私を心配したのか、夏休みにこなたがお泊まり会を提案したのだ。 私も久しぶりにみんなに会えるということでつかさと一緒に彼女の家に行ったのだ。 そしてあの日は私にとって忘れることが出来ない日になった… 時計の針が12時を指した時、こなたが話を切り出した。 こなた「んー、なんかお酒足りないねぇ」 つかさ「こなちゃんとゆきちゃんがお酒に強いなんて知らなかったよ。私お姉ちゃんと一緒でお酒弱いんだー」 みゆき「でもお酒に強いと急性アルコール中毒になることもありますし、強いからといって得をすることもありませんよ」 こなた「お酒無くなっちゃったしジャンケンに負けた人がコンビニに買いに行くってのどうかなー?」 かがみ「あら、いいわね。私はこう見えてもジャンケン強いのよ」 こなた「それじゃあお手並み拝見しますか(≡ω≡.)」 …結局私の一人負け。 みんなには笑われてしまったけど、不思議と悪い気はしなかった。 いい具合に酔っていたの でゆっくり歩いてコンビニに行くことにした。 お酒とおつまみを大量に買い込み鼻唄まじりに帰っているとなにやらこなたの家の前が騒がしい。 それどころかなんでサイレンが鳴っているのよ? 嫌な予感がしてもたつく足で必死に走った。 かがみ「ハァハァ…あ、あのすいません! あの家で何かあったんですか!?」 近所のおばさん「こんな夜中にあの家から『助けて!!』って聞こえたから警察に連絡したのよ それで警察の検証だと現金目当ての強盗で家にいた人は皆殺しだったみたいよ。 まさかこんな近所で殺人事件が起こるなんて、ねぇ… 最近物騒だからあなたも気を付けなさいよ。」 嘘だよ…そんなの… そんなこと…そんなこと… だって私だってさっきまで彼処に…こなたの家に…いたのに… それからの私は意識がぼんやりして警察の事情聴取にもなんて答えたかも覚えていない。 私は大学にも行かなくなってしまったし、犯人も未だに手掛かりすらないらしい。 私は、今の心境を一枚の紙に書き上げた紙を靴の中に置いた。 潮風が気持ちいい。 かがみ「ハハ…なんかもう疲れちゃったよ…こなた…… 今からそっちに行くね」 そう言って私は地面を蹴った。
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Part 4 Part 5 Part 6 かがみ4スレ目作品 4-74 4-328 4-331 4-333 4-494 4-737 4-888 4-890 4-947 4-985 かがみ5スレ目作品 5-160 5-442 5-666 5-746 5-870 かがみ6スレ目作品 6-47 6-53 6-75 6-95 6-105 6-510 6-816 6-899 6-917 ページ最上部へ 前 戻る 次 メニューへ
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本当は、言葉では形容できないくらい大切な妹に優しく接したい。 でも、その妹を守るために強さを求めて、決して自分を甘やかさない姉。 それと大好きな姉と時間の許す限り一緒に、ただ仲良く日々を過ごしたいだけの妹。 かがみが歩み寄れば、つかさはいつでもその手を喜んでとるのに。 自分の間違いに気づいているけど、気持ちに素直になれないかがみにはそれをしない。 ここにきて、久々にみせたかがみの歩み寄りはどういう結末を生むのか。 ── この双子のすれ違いは何を生んだのだろう。 この夢はもうすぐ終わる。 誰に予告されたわけでもない、直感で分かる夢の終わりを──見届けようか。 終焉を。 《Interlude Last:起点》 明かり一つ灯っていない部屋。 唯一の明かりは窓から差し込む夕日だけで──かがみは、その夕日すら当たらない暗がりに座っていた。 今までと違って状況がまったくわからない私は、見える範囲を模索するも、 不鮮明すぎる映像からはほとんどわからない。 読み取れたのはの日めくりカレンダーの日付くらいで。 その日付は──7月7日だった。 ─私らしくないって…なんなのよ。 ─そもそも、私らしさって何?私でもわからないのに、あいつらに私の何がわかるのよ…。 目の前にいる彼女は一切口を動かしていないのに。 それでも私に届いたこの声は、そう思った刹那──ドクンと何かが胎動するような振動が私の中に生まれた。 意識しかない私に初めて生まれた感覚は……嫌悪感と挫折による絶望感だった。 今の私にあるはずのない五臓六腑の1つ、胃が締め付けられるような強いストレスに。 気持ち悪ささえ感じるこの状況に、意識を絡めとられそうになり、必死になって抗うだけ。 ── ここまできて私は理解した。 これはかがみの感じている感覚で、私はその感覚を体験しているんだと。 何故?どうして?私が?かがみの? 疑問符ばかりが浮かぶも、私は答えを持ち合わせていなくて。 意識が強い負の感情に流されそうになっていた。 気持ち悪い。 このまま意識を断とうかと、諦めをつけようとしたとき。 ガチャっと、鍵が解錠されたような音が聞こえた。 丁度その音は、かがみが座っている正面──玄関から聞こえてきた。 状況の変化で若干気が紛れた分の余裕を見る事だけまわす。 かがみもその音に気付いたのか、自分の膝から音のしたドアへ注視していた。 開かれるドアから差し込む夕日が妙に眩しく感じられた。 その中心に立つ影が1つ──つかさがそこにいた。 「…お姉ちゃん?」 不思議そうに呟いたつかさの声から一瞬の安堵を感じたのもつかの間。 一番助けて欲しかった人、でも一番見せたくない人に見られてしまったから、かがみは溢れた。 「…お姉ちゃん、どうし」 「……………………帰って」 つかさの言葉を、かがみの冷たい声が遮り、 「でも…!!!」 「でもじゃなくて!お願い、帰ってよ!!!!!」 悲痛な叫びが部屋に響いていた。 私には先程と似た胎動。 そして、先程とは比にならない重圧に押し潰されていく。 もう音声が聞こえない。でも、映像は流れたままで。 つかさは手に持っていた荷物を落として走り去っていくまで、私はずっとこの場面にいた。 はずだった。 夕日の色に似たヘッドライトが目の前を通り過ぎる。 音声は戻っているようで、荒い息をはく音だけが届いていた。 何台もの車が通り過ぎ、何人もの人を追い抜く。 そんな夜の街を走っているのは──ワタシ? 映像が乱れ、次は赤い光と緑の光がいの一番に目についた。 荒い映像、人工的な光の中に浮かぶ影は4つ。 全部が全部、こちらに向かってくる。 「──?」 「──、つかさが…!」 欠損が多い映像と音声。所々聞き取れない。 だから前を見て。なんとなく赤い光に浮かぶ文字を読んでみた。 「手術中?」 さっきまでなかったはずの口が静かに言葉を紡いで、 その直後にガンっと物騒な音がどこからか聞こえた。 なかったはずの肩に触れるモノ。 霞んでよく見えないそれは誰かの手。 『あんたがついてたはずなのに!!!どうしてつかさがこんなことになってるのよ!ねぇ、かが──』 ワタシハ、だれ? * * * (ピピピピッ…ピピピピッ…) 聞き覚えのある電子音。肩に何か触れている感触で私は目を覚ました。 「──さん、おーい」 徐々に感覚が戻ってくると、肩にふているモノが何か分る。 それは──自分とは別の温度をもった人の手。 「ひぅっ!!?」 自分でも聞いた事ないような声が喉から出て、その場から立ち上がる。 勢いで堅い何かが床に叩き付けられて、凄い音を立てていた。 他から見ればさも間抜けな光景かもしれないと、考えられるだけの思考が戻ってきた。 「うわぁ!?ご、ごめん、泉さん」 「──は?」 でも、完全覚醒には程遠いのか、今置かれた状況が把握出来ずにいた。 泉、泉…と、あるだけの情報から抜けた糸を手繰り寄せる。 ── ああ、そうだ。今は“泉こなた”なんだっけ。 自分から進んでやった日雇いのバイト。 私には名前があっても名字がないから、同居人であるこなたから名義を借りている。 ── うん、今はその休憩中だったはず。 手元に丁度ある時計兼携帯を引き寄せて、寝起きの霞んだままの目で確認する。 休憩は確か13時から1時間で、今は14時──10分を過ぎていた。 「…泉さん、まだ寝ぼけてる?」 「…え、あ!!」 ようやく自分の置かれている本当の状況が理解した。 つまり、私は休憩時間に知らずうちに寝ていて──寝坊したんだ。 目の前にいる人は確か何度か派遣先が一緒で、たまたま仲良くなった人──Aさん(仮名)だ。 ── ああああああ! 自分の失敗に脳内で悶えてから、倒した鉄パイプの椅子を高速動作で立て起こし、 現状を改善すべく頭を大きくふり下げる。 「ご、ご、ごめんなさい!!!」 勢いだけなら土下座も出来そうなくらいの謝罪をした。 そんな様子をどう思ったかは不明だけど、Aさんはクスリと笑った。 「そこまで慌てなくても…まぁ面白いもの見れたから御咎めなしね。休憩交代しましょ」 「本当にごめんなさい…」 「いいって。それより早く現場でないと、そっちで起こられちゃうよ?」 それもそうだと同意を、上げた頭だけで表して、今度はお礼を言った。 「気にしない気にしない、あ」 「?」 「携帯、なってたよ?まさかの彼氏からだったりして」 言われてから携帯を確認すると、確かにメールが来ていた。 今確認しようかと思いつつも、とりあえずこの場にいると現場に出るのが確実に遅れそうだから、 そんな相手いませんよとだけ返して、休憩所から出る事にした。 現場まではそんなにかからないけど、携帯を見る余裕くらいはある。 ボタン一つ押して、送信者を確認すると──といっても今の私にメールをくれる人は1人しかいないわけで。 当然の如く、こなただった。 『仕事終ったら連絡ちょーだい。それにあわせてご飯つくるからさ』 それだけの内容だったけど、ちょっとだけ嬉しかった。 ここ最近元気のないこなたを、どうにか元気にしてやろうと思いながら携帯をしまう。 そして、心に残っているもう1つの事を考えた。 ── 長い夢をみてた。でも、内容はほとんど覚えていないとか。 大切なことはたくさん詰まってたあの夢。 忘れちゃいけないのに、起きた衝撃が大きかったせいかすっかり頭の中には残っていない。 だから、このバイト中はその夢を少しでも思い出そう、と。 《Interlude OUT》 コメントフォーム 名前 コメント GJ!泣 -- 名無しさん (2022-12-23 23 42 58) 重いな…… 愛すること・愛されることをしらずに育った子供は、自分も他人も愛せなくなる。 愛に満たされることによって育まれるはずの健全な自尊心を奪われ、 ただ自分がこのままいてもいいんだという安心感を剥奪される。 かがみのせいじゃないんだよ、もっと楽に生きてもいいんだよと、心の底から言ってあげたい。 でもそれができるのはこなただけ。 こんな辛い思いをしてきたかがみにこそ、本当の幸せを掴んでほしいと切に願います。 -- 18-236 (2008-10-04 19 12 43)
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いつの間にかあなたが私の傍にいてくれることが当たり前になっていた。 あなたの前では本当の自分でいられた。 そんな私にとって大切な人。 じゃああなたにとって私は? いつまでもあなたの傍にいたいと思う。 あなたのことをもっと知りたいと思う。 でもそれは私のわがままでしかない。 大切なあなたに迷惑をかけないよう私は自分の気持ちに蓋をする。 机の上で携帯電話が震え始めた。 静かな部屋にちょっと驚くくらいな大きな音が鳴る。 私は慌てて布団から出てそれを手にした。 かがみからの電話。 「ハローかがみ」 「おっ、今日は珍しく繋がったわね」 からかいを含んだ、でも不快じゃない声。 少し物思いにふけっていた私は脳の切り替えがままならないながらにいつもの私らしく答える。 表情の見えない電話はこういうとき便利だ。 かがみは気にすることなく話を続ける。 たいした用件はなかった。 どうでもいいような話に私らしいアレンジを加えてかがみが突っ込む。 しっかりしているようでちょっと甘いかがみのすきを私がいじる。 だらしない私に真面目なかがみが説教にも近いお小言をくれる。 そんな風に学校のときと変わらない私たちらしい会話が続いていく。 それは時間の経過も忘れてしまうほど楽しいひととき。 「たまには夜更かしせずに早く寝なさいよ」 と、いつもの言葉で会話が終わろうとしていた。 深夜アニメ、ネトゲ、漫画。 毎日のようにそれらを理由にして夜更かしする私。 でもかがみは変わらず(いやちょっと呆れてるけども)注意してくれる。 本当かがみは優しいんだなぁと思った。 「わかってるよ」と返して心の中でありがとうと呟く。 ただおやすみと切れてしまう電話。 ツーツーと無機質な音を聞きながら数秒後に真っ暗になってしまった画面を見つめる。 声でも文字でも……心に秘めているだけでは伝わらないこと。 心の中ではどんなに想っていようと伝わらずに済むということ。 ゆっくりと携帯を閉じ、また布団の中へともぐり込んだ。 あなたの前では私は自分を偽らずにいられた。 でも私の本当の気持ちは知られてはならない。 私が私でいるだけでいつかは溢れ出してしまうこと。 だから私はもう一度あなたの前で仮面を被る。 翌朝、いつものように先にいた二人に笑顔で声をかける。 かがみはちょっぴり怒っていたけれど、やっぱり二人は笑って応えてくれた。 「で、今日はなんで遅かったのよ?」 「いや~ネトゲで狩りに誘われてね、そのままズルズルと」 「はぁ。だから早く寝るよう言ったじゃない」 「楽しいときは時間を忘れるもんだね、はは」 最後は受験生だなんだって呆れられた。 まぁかがみは結構心配してくれてるんだろうね。何度このやりとりを繰り返したことか。 そのかがみらしい気遣いが嬉しくて、少しくすぐったくて私はツンデレとか言ってからかっちゃう。 我ながら素直じゃないね、全く。 でもねかがみ、私が遅れてくる最近の理由はほとんど夜更かしじゃないんだよ。 起きてからみんなと会うまでに気持ちの切り替えというか、心の準備ってやつをしてるんだ。 もちろん誰にも言わないけどね。 私はみんなに対してちょっとした約束事を決めた。 かがみにはあまり調子に乗らないように。 本気で怒られたことはないし、どんな冗談も笑って済ませてくれるかがみだけど、ちょっと自重しようかなって。 別に常にマニアックなことを話したいわけじゃないし、それ以外のことでも話してるだけで楽しいしね。 そういえばいつの日か「友達なくすぞ」って言われたっけ。 うん、私はかがみとずっと友達でいたいよ。 つかさにはなんというか見る目が変わったという感じ。 なんかいつもふわふわしてる感じだけど、そんなつかさがいてくれたから私とかがみはうまくやってこれたわけで。 それに私がどんな話をしても笑ってくれて、不快に思ってないよって。 つかさはとても優しいんだ。 みゆきさんには遠慮というか自重というか。 まぁセクハラまがいの行動はやめたし、なんでもかんでもみゆきさんっていうのもやめた。 みゆきさんは裏を見ないというか、全部笑って受け入れてくれるから。 みゆきさんもやっぱり優しいんだ。 本当にみんな人が良すぎるんだよね。 だからあまりみんなに頼らないように気をつける。 自分が人として成長するためと言ったらかっこいいかもしれないけど、単純にみんなにふさわしい友達でいたいから。 わけのわからない話ばかりして迷惑じゃないかな? 自分の好き勝手な行動にみんなを巻き込んで、それでいいのかな? こんなことを思ったのは初めてだった。 今まで私は自分を出さなかったというか、周りに合わせないと輪に入れなかったからね。 今みたいに言いたいことを言って、好きなだけ甘えて、なんてなかった。 私は一生の友達に出会えたんだよ。 だからみんなを失いたくないってね。 まぁ私のキャラってのがあるから口には出さずに、ちょっとずつ、ちょっとずつ接し方を変えて。 ただ一つだけ誤算だったんだ。 かがみとはクラスは違えど一番気が合うんだ。 やっぱり(本人は否定してるけど)趣味が合うからかな。 多少なり抑えてるけどどんな話でも聞いてくれる。 だから必然的に一緒にいる時間が多くなってね。 それにかがみって本当に可愛いんだよね。 コロコロ表情を変えて見ていて飽きないよ。 あとほら、かがみはなんだかんだいってちゃんと付き合ってくれるからね。 ちょっと不器用で優しくて、一緒にいてとても楽しいかがみ。 それでね、私はかがみを独り占めしたくなっちゃうんだ。 怒った表情も笑顔も私だけに見せてほしい、もっと見たいって。 この先ずっとかがみの隣にいるのは私じゃなきゃ嫌だって。 この気持ちをどう言ってしまえばいいかわからないけど、このままじゃ迷惑をかけてしまうと思った。 依存することも、嫉妬することも。 そうして私はかがみとの接し方がわからなくなってしまう。 逃げ道はいくらでもあった。 「……た。こなた」 「かがみ……?」 「なにしてんの。もう着いたわよ」 「あ、うん」 考え事や言葉に詰まることも増えた。 だからその度にアニメだネトゲだと寝不足のせいにした。 それは今までの私にとって自然なことだから疑われることもない。 呆れているように見えてちらちら何度か私を見るかがみはやっぱりからかいたくなる。 でもそれ以上に嬉しさを感じてしまう私はその視線に気づかないふりをした。 私はただ二人を眺めていた。 かがみがいないとやっぱり私が話を切り出しても通じないわけで。 それにつかさとみゆきさんは見ているだけで、こう幸せになれるというか、飽きないから。 まぁ簡単に言ってしまうと萌える光景なんだけど、あんまり二人の前で萌えって言わないようにしている。 不快な言葉じゃないはずだけど意味をよくわかってない二人にそれを言うのは失礼な気がして。 ROM専なのは本望じゃないけど私がしゃべると会話が変な方向に行ってしまうので最近はずっとこうしてる。 何度か二人が私を見ることがあるけど私にはその視線の意味がわからない。 ただなんでもないよと笑顔でいると二人はきっと私にはできない優しい微笑みを返してくれる。 なんでこうもみんな笑顔が似合うんだろうね。 授業中寝ることが少なくなった。 やっぱり宿題とかでかがみを頼ってちゃいけないから。 あと無駄に頭が働いていて眠くならないというのもある。 そこでも考えるのはみんなのこと、ひいてはかがみのことで。 最近どこにも寄り道してないけど久しぶりに誘っていいかなとか。 今日の昼休みかがみはこっちに来てくれるかな?でも峰岸さんやみさきちがいるよねとか。 どうしようもなく浮かぶのはかがみの楽しそうな表情、私を呼ぶ声が聞こえる。 ああ、まるで恋する乙女だね、こりゃ。あり得ない話だけど。 私とかがみは同性だし、私にとって大切な親友だもんね。 とまぁいろいろ考えているうちに時間は進んでいく。 実際ほとんど授業を聞いてないけどノートだけはちゃんととっているのは成長と言えるだろうか。 「おっす、お昼にしましょ」 とかがみがこっちのクラスにやってきた。 もうそんな時間か、と思いながらいつものやつを取り出した。 弁当じゃないのは時間がないから。本当に。 話し相手が変わったからか盛り上がる三人。 かがみがよく言うように、しゃべるのと食べるのは一緒だと大変だから、私は食べるほうに専念していた。 あっ……全く、いつものことながらこのチョコは手強いね、と。 垂れてくるそれを舐めとるとかがみがじーっとこっちを見ていた。 な、なんデスかっ!? 「えっ!?いや、その……」 そんな驚かなくても。 というかびっくりしたのは私のほうですから。 「そうそう、今度の日曜日遊びに行こうって……ね、つかさ?」 かがみと一緒につかさに視線を移す。 えっと、なんの話って顔してますけど。 「あっ、そ、そうだったよね。ゆきちゃんも大丈夫でしょ?」 今度はみゆきさんに三人の視線が集まる。 あ、眼鏡で表情がわかんないや。 「に、日曜日ですか!?」 キッとかがみがみゆきさんを睨んだ気がした。 「は、はい。もちろん大丈夫ですよ」 「というわけで、こなたは?」 ふぅ、と一息つくみゆきさんと笑顔が怖いかがみ。 あの、目が笑っていませんよ? 「も、もちろん大丈夫だよ」 「じゃあ決定ね!どこに行くとかは考えておくから」 パァッと満面の笑みで宣言したかがみ。 なにも遊ぶ約束一つにそんな気合い入れなくてもねぇ。 と、つかさとみゆきさんを見ると安心したような表情で私を見ていた。 やっぱり二人もかがみがちょっと怖かったんだね。 そしてまた三人で会話を再開していた。 なんか楽しそうだからいいよね。 とりあえず牛乳をちびちび飲み干すことにした。 「こなた、明日の約束忘れてないわよね?」 気がつけばもう土曜日で、その夜にかがみから電話があった。 用件はまぁ明日の予定の確認。 最後にやっぱり「早く寝ること」と注意された。 ええ、わかってますよ。三人を待たせるわけにいかないじゃん。 そう心の中で呟いてベッドにもぐり込んだ。 「遅いっ!」 待ち合わせ場所に着いたころには約束から30分も経っていた。 「ごめんっ!」 「なんで遅れたのよ?」 えっと、日付が変わる前にはちゃんと寝ようとしてたんだよ? 確か電気を消すときに時計を見たら23時になったばかりだったんだよね。 それがさぁ、遠足前日の小学生みたいになぜか寝れなくてねぇ。 どうにか寝ようと羊でも数えようとして…… なんでか羊じゃなくてかがみを数えてたら余計寝れなくなって、目を覚ましたときにはもう。 とは言えない。だからただ謝った。 つかさとみゆきさんはあまり気にしてないみたいだったけどかがみは違った。 謝れば謝るほどなんだか怒ってるみたいで。 その理由もわからずまた謝るとやっぱり機嫌を悪くして。 そのままかがみはとっとと歩き出してしまった。 笑って済ますようなことじゃないと思ったから素直に謝ったんだけど。 どうしよう、かがみを本気で怒らせちゃったかもしれない。 理由もわからないし、こんなこと初めてだし。 先を行く三人に私はとぼとぼついていくことしかできなかった。 掛け値なしのへ コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-04 10 19 44) みゆきさんを気圧すほど、かがみがこだわる理由が気になる。 次も楽しみです。 -- 名無しさん (2009-05-07 07 55 32) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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「んー……あ、あれ」 目覚ましの音に夢の世界から連れ戻され、布団から出ようと思ったのに起き上がれない。 以前の私ならいざ知らず、きちんと起きる習慣の身に着いた今はこの暖かさが魔力とかそんなんじゃなくて。 物理的にどうも体が拘束されてるみたいだった。 「かがみ、起きてよ。朝だし、私動けないし」 抱き締められている、というよりはのしかかってきているかがみを起こそうと試みる。 初めの頃はこうして一つのベッドに二人で寝るのすら恥ずかしかったものだけど。 今ではめちゃくちゃ気持ちよさげに寝ているかがみの寝顔を寝起きにドアップで見ても溜め息が出てしまうほどだから不思議だ。 しかしこの人は眠ったまま私を離してくれないね。 つかさをよく起こしてあげていたという話からして目覚めはいいほうだと思うのに、どうしてだろう。 一応、安眠妨害を承知で強引に起こすことも、無理やりにでも脱出することは可能だ。 そうしないのは少なからずこのままでいいやって思ってる自分がいるわけで。 「かがみぃ、起きてってば。……重いから」 「う、ぅーん……」 ちょっろっと禁句ワードを出したらたまたまかがみが寝返りをうって私の上から退いてくれた。 ふぃ、やっと出れたよ。 時計を見ると予定より数分ばかし遅れた程度。合格点。 当り前だけど二人だけしかいない寝室で、特別何も変わってたことなどないに決まってる。 振り返ってかがみを見てみる。相変わらず熟睡してますね。 なぜかさっきまでの笑顔が消えて時々ウンウン唸っているんだけど、悪い夢でも見てるのかな。 ま、今は無理に起きなくていいからゆっくり休んでてよ。 静かな部屋に小さくおやすみと残してあとにした。 顔を洗ったあと、今私はキッチンに立っています。 朝ご飯作らなきゃいけないから。エプロンをつけて……残念ながら制服エプロンじゃないけどね。 というかもうあの制服も普段着ることはないし。 しばし朝食の献立を思案。とは言っても柊家では家が神社の割に朝は洋風が主だったようで、あえて私は手間のかかる和風を好んでいる。 理由は簡単、毎朝嫁が作った味噌汁を啜るのが日本の食卓ってものじゃないか。 「ぷっ、かがみは私の嫁って言ってたのどこのどいつだったっけなぁ」 半分くらいネタとして使っていた愛情表現がさ、いつの間にかリアルになっちゃってさ。 最初はあんまり女の子女の子って感じなのは私に似合わないし、抵抗もあったりなかったり。 でもかがみは家事が不得手というかわいい欠点を持っているのは現実問題厳しいわけで。 それに食べることが好きなかがみの喜ぶ顔を見れば、こういう役回りも案外悪くないもんだね。 じーっと火のかけてある小さな鍋を見つめながら。 チンと小気味いい音が響いた。 電子レンジから取り出したるは若鶏の唐揚げ。昨日の晩遅く安売りしていたので買いだめしておいたそれから。 別に少しくらい手抜きしたっていいじゃんね。主婦は忙しいのさ、って私まだ大学生だし。 ご飯とお味噌汁と少々お漬物も一緒にテーブルに並べる。良い感じに湯気がこうモクモクと。 時計を確認するともういい時間になっていた。かがみを起こしに行きましょうかね。 あ、私まだ着替えてなかったっけ。ま、いっか。 「起きてかがみ。朝ご飯できたよ」 小さな規則正しい寝息が聞こえるばかり。眠り姫は一向に目を覚まさない。 何度か肩を揺すってみても鬱陶しそうに寝返りをうって逃げていく。愛しの旦那様は寝相がなかなかによくないみたいだ。 ……どっちだっていいんだよ、もう。 こんなにかわいくて綺麗で凛々しくてかっこいい女の子を何と申せばいい。 まるで誘っているようにわずかに開いた唇が憎々しいよ。 不意打ちは私の最も得意とするところ、だから。 ちゅ、っと軽く唇を触れさせた。ちなみに目は閉じない。 頑なに閉じられていた目がゆっくりと開かれて、私は重ねた状態そっとから離れていく。 「ぁ……こな、た?」 「おはようかがみ」 「ん、おはよ」 ぼんやりとした様子で小さく欠伸も漏らすかがみ。きっとキスされたことはわかってないんだろうね。 教えてあげたらかがみのことだから真っ赤になってかわいいところが見られるだろうけど、あえて私はそれをしない。 私からのキスは特別なのだよ。 ま、付き合いだしてから思いの外デレた時のかがみが手ごわくて悔しいからってのもあるんだけどさ。 いつも通りにかがみを食卓へと急かす。 着替えとか後でいいじゃん。私もこのカッコだし。 「もうできてるの? 朝ご飯」 「もちろん。ささ、冷めないうちに食べようね」 「……そうね」 機嫌が悪いというほどじゃないけど、朝特有にローテンションなかがみ。 「個人的にはあんたって朝全くダメなもんだと思ってたんだけど」 「んにゃ、朝がっていうより単純に寝るのが遅かったからかな。最近はそんなに夜更かししてないし」 厳しい監視の目が光ってるからネ。 それに「一緒に寝よ?」って甘えてくるかがみがかわいいのなんの。断れるはずないって。 こういう朝の無防備な感じのかがみを見れるのも私だけの特権だね。 どんな時できっちりしているこの人の、普段はまとめている髪も少し寝癖が目立ってたり。 前にも思ったことだけど、かがみは髪を下ろしているといつもよりちょっぴり大人っぽく見えるな。 「どうかした?」 「えっ、な、なんでもないよ」 ありのままのキミが好き──なんてよくいったもんだねと。 この家は大して広いわけでもないのでいつまでもおしゃべりしているわけにはいかなくて。 出来立ての朝食を見てかがみは小さな溜め息をつく。 「なんにしてもこなたが料理できて助かるわー。こういう光景が毎日見られるのってなんか……安心する」 ドモドモ。でも、あんまりデレた発言されると対応に困るのでほどほどにお願い。 実家にいた頃はそれが普通で、ゆーちゃんには尊敬の眼差しで見られたけど、そういう風に考えることもなかったわけで。 だからかがみに素直に褒められると照れくさくてしょうがない。 かがみを早く席に促して私も向かいに座る。 「いただきます」 合掌したらかがみがご飯を口に運ぶのを見て私もやおら箸を動かす。 今さら味がどうのこうのって思わないけど、まぁ、一応上出来だ。 しばらくの間は無言の行。 一旦箸を休めてお椀を持ってお味噌汁を啜ると、向かいからもずずっと音が聞こえてきた。 親父っぽいかもだけど「あったまるね」と投げかける。 案の定「年寄りくさいぞ」って返ってきたけど本当のことだもん。 だいたい同じくらいに食べ終えてお茶を飲む。あ、どうせなら熱いのにしておけばよかったよ。 「ごちそうさまでした」 「ごちそうさま。……美味しかったわ、こなた」 「どういたしまして」 「あ、洗い物なら私がやっとくからくつろいでなよ」 さりげないそう言うところがいかにも優しいかがみらしい。 まさか皿を割るなどというレベルの不器用なことはないし、お言葉に甘えてテレビでも眺める。 かがみが食べることが好きだというのは昔から知っていることだけど、そのかがみが美味しいって言ってくれるのなら。 つかさほどじゃないけど作ってよかったなって感じたりしていた。 小難しい政治の話とか、連日のように起こる犯罪とか、どうでもいいニュースばかり右から左へと流れていく。 この生活を始めてやっとこさ一ヶ月弱過ぎたところ。 まぁ、当初ほどは確かにだいぶ気が緩んできたこともあるけれど、マンネリって言うほどでもなく。 思っていた以上に暮らしぶりは順調そのものだ。 テレビの音声よりも小さな水音に耳を澄ませながら、今日という一日を始めていく。 「かがみは今日どんな感じだったっけ?」 「相変わらずびっしり埋まってるわよ」 かがみの通う大学は私みたいなお気楽大学生とは違って週に自主的休暇を作る暇などないみたいだった。 曲がりなりにも進学校の高校を卒業して、みゆきさんみたいに本気で医者を目指している友達もいる私だけど、人生ヒトそれぞれってことで。 「じゃあ、帰ってくるのも遅そうだね」 「そうなるわね。もう少し余裕を作ってバイトしたいんだけど」 「ダメだよ。そんなことしたら身体壊しちゃう」 わかってるって、と笑顔のかがみが近づいてくる。 お金のことはお互いに親がいて支えてくれているんだし。 それに私も暇な時にはバイトに精を出しているんだから、かがみがそこまで気にする必要はないんだ。 「心配してくれているのね、こなた」 「当り前じゃん。毎晩睡眠時間削って勉強してるんだもん、心配するよ」 ふわっと、甘い香りが私を包む。 「大丈夫、絶対倒れたりしないから。……それに」 「それに……なに」 「将来こなたを守っていくためにも、今頑張るのよ」 「う、ん……」 首のあたりに柔らかな何かが触れた。 微かな電流が私の体の中を巡る。 かがみの腕の中はあたたかくてとても気持ちがいい。 「そういえば、かがみが家を出るのって、いつ頃だっけ」 「まだ一時間以上あるかしら」 お弁当は30分くらいあればどうにかなると思う。 かがみはきっちりさんだから出かける前の準備は色々とかかるかもしれないけど、たぶんどうにかなる。 というかさ、綺麗なかがみを見るのはもちろん好きなんだけど、他の人も見てるんだって思うと気が気でないというか。 以前そんなこと話したらメイクご指導とかなんとか、弄られる羽目になっちゃったんだけど。 とにもかくにも今しばらくは時間に余裕があるってことで、さ。 「ねぇ、もう少しこのままでも、いいかな」 「当然──」 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-09-21 08 11 58) 楽しい生活 -- かがみんラブ (2012-09-16 21 43 34) 良すぎて 鳥肌が立った -- 名無しさん (2011-05-14 01 41 06) なんか癒される内容です、素晴らしい! -- 白石 (2010-04-01 10 48 25) ほわぁ~ いやされる作品だなぁ -- 白夜 (2010-03-01 21 29 47) 癒された! -- (*´ω`*) (2010-02-18 14 11 04) 2人の生活が目に浮かぶようです。 マンネリ?いえいえ、それが良いのです。歌にもあるでしょ『何でも無い様な事が幸せだったと思う』って、古~!! -- kk (2010-02-09 20 52 06) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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「綺麗だよね。」 私の右耳朶に残ったそれを、まじまじと見つめるこなた。 そして、自分の左耳朶の片割れと見比べようと一生懸命水晶体を左端に寄せたり、手で引っ張ったり。 …さっき長いこと見てただろうに。 「半年も箱の中じゃ、劣化しないか、とか、不安になるよ。」 ちょっと物惜しそうに。 ―って言ってもなぁ。片方だけだと… まぁいいか。 「いきなり同性愛者だって公表したいなら、付けてもいいけど。」 しつこいながらに、感染症も気になるしね。 その辺は当然、本人も弁えてはいるだろうが。 「は、話が飛ぶなぁ… とりあえず『社会性』学ぼうとしてる人間ですんで、もうちぃと待っとって。」 「待ってなんかない。」 「… え?」 途端に表情を曇らすこなた。少し突き放すような言い草だったか。 …その裏に秘めたものの存在が、実は嬉しくて仕方ないが。 「あんたの前途、危うくするような要求はしないわよ。」 屈辱を強いる関係など、友情ですらないから。 「あんたが、思ったように生きられれば、それでいい。 私も …嬉しいから。」 只、あんたが居てくれれば。 「私のワガママは、それだけ。 その、ピアス、だけ。」 あんたに、忘れられたくない。 あんたの活き活きしてる姿が、私の明日を保証してくれるから。 あんたに振り回されんのが、高校時代からの、私の「生き甲斐」だから。 あんたの幸せが、私の『趣味』だから。 ―― 「…かがみ。」 「ん?」 「お母さんみたい。」 「…えぁ?」 「本当に。」 表情から伺うに、演技や冗談は勿論、何の演繹でも比喩でも修飾でもないらしい。 …いや、形容ではあるか。 しかし、言われた側としては違和感しか出てこない。 名誉ではあるが、身に余る。 ―この子の好きなファンタジー風に言えばそんなとこか。 言葉を待つと、沈黙に耐えられなくなったのか、はたまた自分の発言の意図が今頃になって汲めたのか。 こなたは、へへ、と唇を舐める。照れ隠しのように。 「… 私からは一番縁遠い立場が出てきたな。 実を言うと、半分頭からも消えかかってたけどね。」 それは、嘘だ。 こなたが髪を伸ばしている理由を聞いた時から、 この子は母親… かなたさんの後姿を生涯追い続けるだろうって事を、何となくではあるが、実感している。 詰問の代わりに眉根に皺を寄せたら、観念したように掌を見せ、話し出した。 「母さん。憧れてた、本当は。 写真の中でしか会えないし、会ったことないから、“どんな人か”、正確には知らない。 …だけど、だからこそ、かな。 優しそうで、背ぇ小っちゃいけど、包容力あって、綺麗で… お蔭であの馬鹿親父は、過去にしか目が行かなくなったけど。 …無理もない、か。それ位の。」 ― 矢張り、私の直感は当たっている。 記憶のカオスから「あれ」の一言を見出した創造神の受け売り、という表現がまさに相応しい、至極穏やかな、満ち足りた、表情。 目尻を窄め、一言一言から快の成分を抽出するような素振りに、“安堵”に近い心境が読み取れる。 故人という断絶はあれど、肉親として、20の娘からここまで慕われる存在は、地球規模でも相当希少なのではなかろうか。 正直に明かせば、身の程知らずながらに、敵愾心に近い感覚が早くも意識の表層に上ってくる。それ程までの。 「でも、現実の、三次元の私にとって、実際の教育者に、保護者に … 支えに、なってくれた人は。 もっとずっと身近にいた。」 しかしこの感情は、刹那のもとに掻き消える事となった。 「かがみは、私の『お母さん』 ―育ての母、なのかな。今でも。」 ―― 「いつだって傍に居てくれて。危なっかしい、ガキのまんま、さっぱり成長できてないような小娘を、しっかりリードしてくれた。」 心底… とはいえ一方で確かに喜んでるんだからそうでもないか、兎も角、当惑する。 「な、何言ってんのよ… あんたの親って、そんなに出来た人間に思う? あんたのパターンすら把握し切れてなかったってのに…」 結局、私のこの子への行いは、さっき当の本人が貶めた『汚いもの』とどんな差異もない。 全てが見返りを、望んでの事。 この子が心から楽しめるような、そんな日々への布石を敷く切欠になり、そのお裾分けを想定しての… まさに例示の通りの“下品なact”。 算盤ずくで、『肩口に溜まった垢を掻き出す』類の自慰行為に違いなかった。 なのに、この子は… それを知ってか知らずか。 「第一、要求してんのはこっちでしょ? 何で私が、あんたを“守れる立場”なんかに、繰り上がってんのよ。 それにさっきも言ったように、逆に、生きてく為に必要なことは、全部あんたから教わった。 同じように、あんたの“役に立てた”事なんか一つもない。 今だって、大した実績も誇りも人間性もない、たかが学生なんかに、何が出来るっての。 迷惑、って程じゃないけど、正直荷が重いわ。」 老後の面倒を見て貰う為に、子に出資する肉親は、恐らくいない。 居るとしたって実際にそんな存在に成り下がるのは、人として、真の身体性共有者として、私ならまっぴら御免だ。 「だから、それも含めて、だよ。 …かがみが言うように、私に何か出来てるんなら、ね。」 ―だが、血の契りのない、求める側が自我をある程度肉付けている過程でのそうした関係では、どうなのか。 慕われる事、見上げられる事を、求められる側が望みさえしなければ、あるいは。 「私だって、かがみだけはしっかり『見てた』から。かがみが『見て』くれたみたいに。 “かがみだから”。かがみにしか出せないペースだから、雰囲気だから、私はそう思った訳で。」 矢張り、この子は、私の総体を見ていてくれた。 “私性”を。“私らしさ”を。 そして、その変容の様をも、愉悦と喜びと、期待を持って。 何を否定するでもなく、唯、あるがままを、受け容れて。 私の、この子への態度における目標の段階など、とうに達成している。 ―やっぱり、あんたは凄い。 「一番はさ、『目』だよ。私を見ててくれる『目』。 何というかね、“母さん”なんだよ、上手く言えないけど。 私の… そうだな、後ろの ―背後の方まで、心配してくれてる、っていう。」 立ち上がり、空を見上げながら、相変わらず虫が大合唱を続けている芝生の中へ、歩を進めるこなた。 目、か。 意識したことはない。というか、本人にとって一番気付きにくい部位だ。 正しようのない部分に顕れくるのが本性、という一般認識もある。 ―そうか。それに従えば。今先刻までの私は、己の身体性も弁えず、夕食時家族に披露していた過ちの下敷きとなる視点で ― 即ち、見下ろす立場でこなたを見ていた、という事になる。 無論つかさにもだが、我ながら、馬鹿みたいに失敬で無防備な真似をしていたもんだ。 この子に、さっきの視点から何かを正確に読み取られたりしていたら、正真正銘、末代までの恥だ。 「私が、このまま生きてても良い、って、ちゃんと教えてくれる。 そんなの、“母さん”だけだよ。」 言うなれば、高校時代以降の私の目標は、この子の親友、或いはそれ以降の座。 あの、ある意味で破天荒な考え方や振る舞いに興味を覚え、その仲を深めたくて、世間一般のいう欲望のやり取りに応じてきた。 初めから狙いは明確で、もっと低次元を向いていたのだ。 だからそんな中で、この子を、見上げることはあっても、 見下ろす視点は ―やっとそのレベルか、というような『待ち受ける』立場の視点も含めて― 少なくともそれまでの私の中にはなかった筈だ。 呆れたり言葉を選んだり、荒げたりしたことはある。だが、それは対等の地平に立ってこそ出来る事。 この子は、常に私の隣をキープしていた。してくれていた。 何よりの望みは、願いは。 あの頃に同じ。 この子と共に、生きていられる事。 それが叶わなくとも、この地球のどこかで、この子が、つつがなく日々を暮らしてゆける事。 だからと言って、それでは自分の欲望が満たされるだけだ。何も母性とは言えまい。 「一番身近に居てくれた人、ってこと。 私も、かがみが私に感じてくれてたのと同じ。かがみが、一番安心できる人。 つかさやみゆきさん達も、勿論身近な友達。 だけど、何ていうか… かがみはさ、私の欠点、見ててくれたんだ。 苦手なとこはそれでいいから、一緒に頑張ろう、って、そこ補ってくれる、みたいな、そういう目線で付き合ってくてれた。」 さっきの『目』に関わる話か。 …心当たりは、ない訳ではない。 でもそれも、結局自己の安定っていう目的があっての事。“下品なact”の一。 この子の好きな、二次元世界の住人ならあるいは存在しうるだろう。表も裏もない勧善懲悪の聖人君子が。 しかし、そんな登場人物の織り成す限りなく薄っぺらなファンタジーに、果たしてニーズはあるのか? ―そう、考えれば。 あんたの思うように、カントでは… 理想的ではいられない。 私だって、奥行きのある人間だから。あんたと同じ。 「だから… 甘えちゃったのかな。」 この行動にはこう対応して、こう言われたらこう言い返してやろう… “作り物”につきもののそんな平面状のシミュレーション意識とは別次元の、1000%の自分で付き合える関係。 私が望んだのはそれで、かくの如く、こなただってそうだ。 だからこそ、常日頃からさりげなく私に目を掛けて、どんなに些細な変化も見逃さないでいてくれた。 そのすました友情に、単独じゃまともな生活すらままならないうさぎが、どんなに助けられたことか。 「かがみにとっては、分かるよ。迷惑なんだろうって。 結局、私にかまわれてる、って、気付いてるもんね。」 それがあったからこそ、一層有難かったのに。 意図としては、場の空気を和らげる為の… 自分が大したことないのを、本気ではない事を、アピールする為の方策だったんだって。 ―結局、大学に上るまで気付けずじまいだったけど。 「でも …」 そして。 ― 全く、回りくどい事この上ないが、先程披露したように、自分もその体質の例に漏れない為、非難はすまい。 兎も角。 この子の結論は、至って単純で。 「出来ることなら、最期まで腐れ縁でいたいな。」 綻ぶ、桜色。 「一生に、一度だから。 …誰かと、知り合えるって事は。仲良くなれるって事は。」 ― そうか。 だったら。 戸籍上の母親は、一人の人間の生涯にとって、有限の存在だ。 いずれは、親元を離れる時が、誰にでも訪れる。 そして、ゆくゆくは立場を入れ替える、そういう時期が。 しかし、それが“他”同士の認識上の概念… 言葉は悪いが、一緒に居る「口実」が主題のものなら。 この子がそう言うなら… それを望むなら。 私は、喜んでこの子の保護者役を… 『母親役』を ―精神年齢的には、本来“妹”辺りが妥当だろうが― 買って出る。 「そうね。」 或いは、そんな作為は端から無意味なのかもしれないが。 論拠は薄い。むしろ、客観的には、無い。でも、「何となく。」、直感の部分で確かに感じる。 違う進路を選んでも、この子と私の運命は、どこかで必ず、交差する。 現実問題としたって、方向は違おうと、終着点が「未来」っていう同じ漠然としたものへ向かっている限り、可能性はゼロの筈がない。 だったら、その可能性を意図して育ててゆくのが、そこを「より良く」歩むことを望むものの義務であり、権利。 ちょっと姑息かも判らないけど、今出来るのは、これ位の、些細な働き掛け。 この子との「縁」をこの先も維持してゆきたい。 私の本心がそう願うのだから、そのものを発露するのが、人が人である為のガイドライン、『道』というもの、らしい。 こなたが望むなら、友情のその先でも、どこへでもどこまででも進んでゆきたい。そういう心境に、今の私はある。 場の空気に流され過ぎだ、というのなら、それでもいい。 恐らくは、私の潜在意識に長らく身を伏していたものだ。この子と、出会って以来。 前途を覆う闇など、最早恐るるに足らない。 『可能性』は“切り拓くもの”。「死」とは“留まること”。 運命を「なるようにしてゆく」のは、畢竟はその主体、人間自身だ。 砦の構築なら、既に終わっている。戦って済むことなら、だが。 でも、足並みは揃えたい。 こなたの言うよう、嗜好とか意地とか見栄とかプライドとか、かねてから大概の人間は、そういったくだらない概念に囚われてきたものだ。 最早その存在が自分の感性の一翼を担うまでに、惹き込まれた相手が苦しむ様を、心から望む人間が、果たして居るだろうか。 『要求だけなら赤ん坊でも出来る』か。つくづく、先人は偉大だ。 言ってみれば、無闇に蟻を踏み潰し、蜻蛉の羽を毟り取る幼少期の思い出に憑かれた裸の猿… “社会性を乱す側”の一部は、そうかも分からない。 何より、優劣を競い合う関係など、一時の気休めしか齎さない。しかも一方にだけ。 そんなものをこの子は望むまい。無論、私もだ。 こなたは、私には背を向け、淵を朧げに空に滲ませた半月を見上げている。 その面に、何を映し出し、見出そうとしているのか。 結局私は、この名の通り、あんたの鏡に… は、なってやれなかった。 中途半端な働き掛けと、自分の欲望の処理との兼ね合いばかりに気を回していて。 気が付いたら、現実から目を遠ざけさせてばかりいた。 言うなれば、換気扇のないガスコンロの傍に数ヶ月置かれ、油染みで使い物にならなくなった、置き鏡。 だが、こんな出来損ないに、まだ使い道を考えていてくれるなら、私は自ら、面から染みをこそぎ取る事にする。 一度感情移入した相手の役に、もう一度立てるというのなら、これ程嬉しく、名誉なことはない。 「なんかさ、笑っちゃうよね。」 「ん?」 振り向く。 さては疲れてきたか。 『いつものように』、呆けた声音に馬鹿を見る視線― 「全部受け止めるよー、とか言い出した方が、実は『受け止められたがってる』なんて。」 どころか。 翡翠色が例の揺らめきを湛えている。 下瞼には、溜めた池に月を浮かべて。 ― これか。 この子に関する不鮮明だった部分の繋がりが、一挙に見えてきた。 でも、今更我慢してもね。 「大して変わりゃしないわよ。」 私は両腕を差し出す。 ― その証拠は、あんたの身近にも展開していた筈だ。 ここでわざわざ言葉にするのは、あんたへの侮辱に取られても止むを得ない、が。 「私だって、そんなもんだった。 何かにつけて切欠作って… いつだって、あんたを頼ってた。」 …物凄く恥ずかしい。 きっと顔は、さっきまで食卓でご飯に摺り込んでいた梅干みたいな色か。 だが、体面なんかに構ってられない。 こなたは、目の前に居るんだから。 生のままの、らしくない私の言葉に、先述の儚げな笑みで応えるこなた。 「… 優しいよね。 今日も。 ほんとに。」 引きつった喉の奥から紡がれる、音節のないハーモニー。 いわゆる“鼻声”だ。 とうとう鼻が潤ってきたらしい。 尻の痣の位置も知り合ってるような親友が相手なんだから、かめばいいのに。 「私はさ、こういう身分になっちゃったから、っ。 … これ以上、先のある人に… これからだ、って、人に、甘えられない … だけどっ…」 否、辛そうだ。 ―違いない。 今の今まで、そのか細い二本の足を支える踏み台を、自分の「感情」と「誇り」を“ジャンク材”に、何とか組み上げてきたのだろう。 そうした骨身を晒す日々の果てに訪れた孤独は、不可視の足でその張りぼてを踏み躙り、けし潰した。 煙草の吸殻への仕打と寸分違わず。 かつて絶対だった拠所を失ったこなたは、今や、こんなにも小さい。 「… 今日だけ。 今日だけだ、から。」 だのにこなたは相変わらずの笑顔だ。不器用な、“距離”を感じる作り笑い。 ― だけど、どうなんだろう。 眉は八の字に開き、頬はぴくぴく震えている。 よく見たら、飴色の筋が一本 … 嗚呼。 こなたが、泣いている。 人前で、雫を落として。 他でもない、私が、決壊させてしまった。 無論、初めてだ。 この子が、「ただの友達」の一線を踏み越えて、私に、自分をここまで開いて見せたのは。 無防備に、自分の“弱み”を曝け出すのは勿論のこと。 身近な人間を題材に、自らが拵えた精神面におけるヒエラルキーの概念それ自体を叩き壊し、 『喉に浮かんだありのまま』を訴え出たのは。 そして、長年気掛かりだった現象の由来が、これで一気に解明した。 当人には余りに似つかわしくなく、独り善がりな前提の刷り込まれた無意識が、 今の今まで、正確な認知を拒んでいたらしい。 時たまそのニヒリスティクな視線の陰方に、ほんの僅かに伺えた、翡翠色の穏やかな揺らめきは、 この子の、涙だったのだと。 2chや哲学系(ぶった)ブログの類に溢れる『名言』で前頭葉を武装して。 道士みたいな心境を常日頃身辺に漂わせてみせて。 近場のどんな悲劇、どんな事件に対しても、「そんなもんだよ。」と鼻で笑える人格を「装って」。 そうして、あんたはいつだって、感情を抑えていた。 涙を堪えた、泣き笑いを続けてきた。 だけど。 幕が下りても厚化粧を取らないピエロは、ただの狂人に違いない事を、あんたは、漸く悟ったのだ。 恐らくは、受験の失敗… 人類学の言う、「通過儀礼」の中で。 …っ。 ― ― 唇を、締まりなく引き伸ばす。 「何つったっけ。『ツンデレ』?」 今となっては、例えるなら昭和の香りすら漂い出しかねない、 かつては始点も向けられていたベクトルも真逆だった私の言葉に、こなたは漸く破顔した。 目尻を下げ、口端を引き上げ、涙の跡を煌かせて。 思い返してみれば、さっきこなたの挙げた“使い古された台詞”の類は腐るほどある。 ラノベやコミックをランダムに数冊開けば、既にその傾向が見て取れる程に。 例えば、「時間が止まる」感覚。 無粋至極な例えだが、それが客観的な事実だと言うなら、 唐突に現れたロードローラーの上で吼える輩が後を絶つまい。 だがこの言葉に、そういった脚色の類は一切含まれていない、という、かつてのこの子の説が、 今、私の中で、こうして証明されている。 経験者にしか、決して実感できない、論理屈とは一線を画した、感覚。 ―あくまで論理に徹するなら、傲慢以外の何のもでもない、のかも知れないが。 竜胆色した毛並みのロップイヤーが、一直線に私の胸を目掛けてきたから、 私はその放物線の終点で、この子の全身がなるべく納まり易いよう、腕を、胸控を一層広げ、 その香りを、力一杯、抱き止めた。 高校時代には、いっそ縁のなかった感覚だが。 “対等”の存在を腕に抱き留める、という行為が、 愛おしく思う存在の、髪を撫でるという行為が、どんなに心地良いものなのか。 教えてくれたのは。 やっぱり、こなただった。 私にとっては。 タカネノハナ 変わり映えはしたが、他でもない、私の、生涯唯一つの竜胆、こなただった。 こなた … Wonderwall(完結)へ続く コメントフォーム 名前 コメント
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Part 1 Part 2 Part 3 かがみ1スレ目作品 1-361 1-371 1-405 1-461 1-533 1-571 1-584 1-730 1-849 1-935 かがみ2スレ目作品 2-22 2-57 2-63 2-110 2-156 2-215 2-217 2-227 2-326 2-348 2-349 2-392 2-427 2-489 2-502 2-574 2-684 2-755 2-765 2-777 2-778 2-896 かがみ3スレ目作品 3-95 3-127 3-491 3-568 3-640 3-675 3-882 3-60 3-550 3-762 ページ最上部へ 戻る 次 メニューへ
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【名前】泉こなた 【出展】らき☆すた 【種族】人間 【性別】女性 【声優】平野綾(涼宮ハルヒの憂鬱の涼宮ハルヒ、DEATH NOTEの弥海砂、絶対可憐チルドレンの明石薫) 【年齢】高校3年生 【外見】 水色の超ロングヘアで大きなアホ毛がある。瞳は緑色。左目の左下に泣きぼくろがある。 小学生に間違えられるぐらいの身長(142cm)および体型である。 【設定】 典型的なオタクであるが、いわゆる「腐女子」というタイプではなく、(父の影響で)男性向けのジャンルを主に好んでいる。 ゲーム(主にエロゲーやギャルゲーと呼ばれるジャンルや、インターネットゲーム)や深夜アニメ、読書(漫画)が大好き。 またゲームセンターなどに設置されるゲーム全般にも一日の長がある。 逆にライトノベルなど活字ものはオタクジャンルであっても苦手。 母親を物心つかぬうちに亡くし、父親と二人暮しだったが、小早川ゆたかが高校入学と同時に泉家に下宿をはじめ、以後は三人暮らし。 趣味と実益を兼ねてコスプレ喫茶でアルバイトをしている。 得意科目は体育(得意なだけで好きという訳では無い)。作中では運動能力抜群と評されている。 ゴールデンタイムのテレビアニメが見られなくなるのを避ける為クラブには所属していない。苦手科目は理系全般。 【口調・人称】 一人称は「私」。 柊かがみ→かがみ、かがみん 柊つかさ→つかさ 小早川ゆたか→ゆーちゃん 【備考】 以下、アニメキャラ・バトルロワイヤル 2ndにおけるネタバレを含む + 開示する 泉こなたの本ロワ内における動向 初登場話 033 いきなりは変われない 死亡話 136 禁忌の身体 登場話数 6話 スタンス 対主催(脱出) 現在状況 一日目の昼、死亡。遺体は【F-5】に埋葬された キャラとの関係(最新話時点) キャラ名 関係 呼び方 解説 初遭遇話 柊かがみ 仲間 かがみ 元世界の親友。 ※ロワ内では再会していない。 柊つかさ 仲間 つかさ 元世界の親友。 ※ロワ内では再会していない。 小早川ゆたか 仲間 ゆーちゃん 親類(従妹)。同居している ※ロワ内では再会していない。 アルフォンス・エルリック 恐怖→仲間 アル君 お互い励ましあう 033 いきなりは変われない スバル・ナカジマ 仲間 スバル お互い励ましあう 076 美少女と甲冑、他 マース・ヒューズ 仲間 ヒューズさん ウチのお父さんに似ている感じがする 076 美少女と甲冑、他 ロイ・マスタング 警戒 殺害された。 136 禁忌の身体 最終状態 DG細胞によって正気を失ったロイ・マスタングによって殺害。 遺体は【F-5】布団屋の裏庭に埋葬。墓標には『無名少女の墓』と刻まれている。 なおBeautiful Dreamer ~Smile Againにおいて小早川ゆたかの夢に登場している 踏破地域 【G-3】空港→【F-4】東側の橋の下→【F-4】民家→【F-5】商店街・布団屋の中→【F-5】布団屋裏庭 1 2 3 4 5 6 7 8 A■■■■■■■■ B■■■■■■■■ C■■■■■■■■ D■■■■■■■■ E■■■■■■■■ F■■■□□■■■ G■■□■■■■■ H■■■■■■■■
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「あっ、いわし雲だー」 春日部駅の向こう、空に浮かぶ雲を指差してつかさが嬉しそうに言う。 「秋の季語と言われていますが、やっぱりこの雲を見ると実感しますね」 みゆきも空を見上げ目を細める。 「いわし雲は巻積雲(けんせきうん)のことでして、他にもうろこ雲、さば雲とも呼ばれているそうですよ」 「確かにうろこみたいにいっぱいだね」 こなたもつられたように空の雲を見るので、わたしももう一度空を見た。鯖と言われてもピンとこないが、 確かに鱗とも鰯ともとれる小さな雲がたくさん空に浮かんでいる。これぞ秋、という感じの空だ。 こなたがぼーっと上を向いたままなのでわたしも空を見続ける。横ではつかさとみゆきがいつもの会話を始めていた。 「そうなんだ~サバは秋が旬だからそう言われてるのかな?」 「ええっと…あの、『寒鯖』という言葉を良く聞きますが、鯖が旬なのは冬じゃないんですか?」 あれ?みゆきが質問を返すなんて珍しい。 「そっか…ゆきちゃんあんまり生魚好きじゃないもんね。えへへ、あのね一般的に『寒サバ』って呼ばれているのは 冬に九州の方で獲れたサバなんだよ。そっちの方で獲れるサバは寒い時期に味が良くなるんだって。だから 冬が旬って言われてるんだよ。 秋が旬なのは太平洋で獲れるサバで、9月から10月くらいに産卵のために北海道の方から戻ってきたものなんだって。 こっちは『秋サバ』って呼ばれてるんだよ」 「そうなんですか、勉強になります。お料理が上手なだけあって食材にもお詳しいんですね。 さすがつかささんです」 「えへへ、そんなことないよー。この前買った料理の本に書いてあったのを覚えてただけだもん」 おやおや、嬉しそうな顔しちゃって。 みゆきに誉められたのが余程嬉しかったのか、ちょっとつついたら崩れ落ちそうなムースケーキのように つかさは照れている。 「…そういえば『秋鯖は嫁に食わすな』ということわざもありましたっけ。 つかささんをお嫁さんに迎える方は幸せですね」 「そ、そんなことないって。もう、ゆきちゃんってば…」 ちなみにかかっているソースはストロベリーのようだ。 わたしはそんなつかさを微笑ましく思いながら、同時に別の理由で少しだけちくりと胸が痛む。 「10月…か。4月からもう半年も経ったのね」 誰にも聞こえないように小さく呟く。さきほど見上げたときにも思ったが、年月が経つのは早い。夏日が 続いていたせいか、まだ夏休みが終わって少し経っただけのような気がしていた。 それでも、夏休み明けテストに修学旅行、体育祭、模試と様々なイベントがあった分だけ、季節は先へと 進んでいる。夏から秋へ、そして冬。その先にも―― 「そだね、あっという間に2クールすぎて番組改変期だよ」 「?!」 いつの間にかこなたが空を見るのをやめ、こちらを見ていた。 気恥ずかしさから顔をそらす。 まただ。なぜだかわからないけど、わたしの『誰にも聞こえないような声』はこなたには聞こえてしまう。 …これからは心の中で呟くことにしよう。 「また録画予約セットしとかないとなぁ…新しいガ○ダム始まるし」 月曜は…で、火曜日は…と嬉しそうに新番組を指折り数える姿に力が抜ける。こいつにとっては過ぎ行く季節に 思いを馳せるという行為は無縁のようだ。 卒業まで折り返しを過ぎたって言うのに…ちょっとくらい寂しくなったりしないのかな。 独り言を聞かれていたという気恥ずかしさと少しだけ理不尽な苛立ち、それらが影響したのだろうか、 わたしの声は多少呆れながらもキツイものになってしまっていた。 「…あんたそろそろ本気で受験に向かわないと真剣にマズイわよ? センター試験の出願も12日までなんだし」 「うぅ…LR同時押しでも現実からは逃れられないか…」 どんよりと落ち込むこなた。 こなたのアホ毛――アンテナの角度も90度から45度くらいまで下がってしまった。 「確かに国公立やセンター試験利用の私学などの出願も同時ですから、ますます学生から受験生の方へ シフトしていくことになりそうですね」 そんなこなたに少しだけためらいがちにみゆきが話しかける。そうそう、みゆきからもたまには 少しくらい言ってもらわないと。 「みゆきさんまで…」 さらにこなたががっくりと肩を落とす。それを見たみゆきも同じように肩を落とすので、 わたしは「気にしなくていいから」と手で合図した。 「確かにこのところ毎週のように土曜日や日曜日に模試、模試、模試だもんね。わたし最近前みたいに ゆっくり寝たことないよ」 「つかさ…とかいいつつこの間の日曜、一日中パジャマだったじゃない」 「だ、だって眠かったんだもん。お姉ちゃんみたいに毎日遅くまで勉強できないよ」 「いやいや、そんな毎日はやってないってば」 (だいたいいつも誰かさんが夜中に電話してくるからさ。それまでやってるだけだって)とは声には出さない。 「…かがみそんなに勉強してるの?」 気づくとつかさの言葉にこなたが少しだけ顔を上げていた。 「だってセンター試験まであと3ヶ月しかないじゃない。ここからは徐々にギア上げていかなきゃならないんだし。 あんたもいつまでも深夜まで遊んでるようならわたし知らないわよ?」 「そっか…じゃあ迷…かな電……」 こなたは何かを小声で呟く。既に頭のアンテナは30度を下回るほどの角度しかない。その上あんなに しおらせて…仕方がない、少しくらいフォローしてやるか。 そういえばこの前、夏休み明けテストの結果が良かったと喜んでいたっけ。夏休み中、一緒に勉強した効果かな? 「ま、まあ「でも泉さんこの前の夏休み明けのテストの結果は良かったんですよね」…」 うわっ、また被った。 今度はみゆきか…なんだか最近タイミングが悪いようだ。 「うん…まぁね」 みゆきのフォローにアンテナが微かに反応する。 「そうそう、黒井先生がびっくりしてたよ、『泉どないしたー?』って。わたしも成績伸びてほめられたし」 「きっとつかささんも泉さんも夏休みの間、かがみさんたちと一緒に勉強した成果が出たんですね」 えへへと嬉しそうに笑うつかさとみゆきの優しい微笑みにアンテナはまた起き上がり始めた。 しかし、45度を過ぎたところで動きは止まる。 不思議に思って顔の方に視線を下げると、こなたと目が合った――と思ったら、びくっと怯えたように 横を向かれた。そしてまたアンテナはへにゃりとしおれる。 何よその反応は。 誉めてあげようかな、と思ったがやっぱりやめた。これから取りあえず中間までは少し厳しく行くことにしよう。 …言っておくが決して八つ当たりなどではない。 「じゃあ明日から放課後は勉強会ね。推薦入試の内申書の考査はこの中間までだから、みっちり鍛えてあげるわ。 みゆきも手伝って。あとつかさもしっかり参加しなさい。調理師目指すにしても、まだまだ自分の可能性を 狭めることないんだからね」 「わかりました。私でお役に立てるのでしたら」 「ど、どんだけー」 よし、いい返事だ。さて問題のこなたの方はどうだろう? もし嫌だといっても首根っこ掴まえて―― 「…いいの?」 「へ?!」 予想外の反応に思わず間抜けな声が出る。 ちょっとこなたさん、何ですかそのしおらしい態度は? 「いいの…って、放課後みんなで勉強するってだけよ? 別にみんなでDSの勉強シリーズのソフトとか やる訳じゃないのよ?」 驚くわたしに対して、こなたはアヒルの口を見せた。 「だって…さっき(※注:前作で)かがみ『色々と忙しくて勉強教えてる暇ない』って言ってたからさ。 夜だって遅くまで勉強してるみたいだし、てっきりかがみに見捨てられたかと思ったよ。…ネトゲしてるの事実だし」 そういえば、そんなことを言った気もする。 「あ、あれは冗談に決まってるでしょ? ……あんたの『天高く~』(※注:前作での会話より)が 冗談だったらの話だけど」 「もちろん、あれは冗談だよ。は、はははははは」 いや、目が泳いでるけど…まあいいわ。 ピョンといつものように跳ね上がったアンテナを見ると、そんなツッコミを入れるのもバカバカしく 思えてくるから不思議だ。 「それに、ちゃんと覚えてるんだからね」 「へ?」 何を?と言いたげなこなたに教えてあげる。 「夏休み最後の日に約束したでしょ? 『安心しなさい、しっかり勉強見てあげるから…』って。も、もちろん、 その時も言ったとおり『みゆきやつかさと一緒に』よ。だから明日からはしっかり――」 「かがみっ!」 わたしが最後まで言い切る前にアンテナが受信機ごと飛んできた。 「ひゃあっ?!」 「……かがみぃ」 お、思わず避けてしまった。 こなたは手を前に突き出したまま、恨みがましい目でこっちを見ている。 「なんで避けるのさ~」 「だ…だってあんたここ駅のまん前よ?恥ずかしいじゃない!」 「じゃあどこならいいの?」 「うっ…そ、そんな言いにくい事を――って違うから!」 …しまった。 とっさに下を向く。こんな顔見られたらあいつに何を言われるかわからない。 ちらりとこなたの方を向くと、やはりニヤニヤしていた。 みゆきは「あらあら」と言うように微笑んでいる。 つかさもみゆきと視線を交わして笑っている。 「単なるスキンシップだってば、親愛の表現の」 「はいはい、わかったわよ。さ、行きましょ?」 「ちぇ~、ツンに戻っちゃったよ」 悔しそうなこなたの声を後に定期を出して改札を抜ける。まったくもう…さっきまでしおらしかったのが ウソのようだ。 でもまあ、良いものも見れたしいいか。 ――さっきわたしに飛びついてきた時の笑顔。『約束』のこと…そんなに嬉しかったのかな? 胸の中に暖かさが柔らかく広がると同時にあの日の記憶が頭の中に映し出される。 そうだ、明日の勉強会にクッキーでも焼いて持っていってあげよう。テスト頑張ったご褒美ってことで。 こなた…喜んでくれるかな? 「かがみ?」 そんなことを考えていると、こなたに横から顔を覗き込まれた。 「な、何よ」 まるで考えていたことを見透かされたような気がして少しだけ焦る。 「いや~何を考えてるのかな~って。ずいぶんうれしそうだったからさ」 「別に大した事じゃないわよ」 そういうこなたの方こそ嬉しそうにニコニコしている。 さっきの笑顔がフラッシュバックして、下を向くわたしの頭にいつもの電話のことが浮かんだ。 そうだ、今日の夜のこと聞いておかないと。オナベ心とオカマ心について(※注:前作より)の結論も 聞きたいし、ちょっと進路のこととかも話したい。センター試験の申し込みも近いから、もしこなたと 志望校が被るようなら申し込み書取り寄せなきゃならないし…。 「あのさ、今日の夜の電話のことなんだけど…」 「あ、うん…」 あれ? なんでそんな顔するの? 電話したらマズイのかな。 少しだけ不安になりながらも顔を上げ、こなたの複雑な表情に向かって尋ねる。 「もし、こなたが平気なら今夜電話してもいいかな?」 ポカーン。 そんな擬音が聞こえたかのようにこなたはほうけている。こういう表情をハトが豆鉄砲を食らったような―― というのだろうか、まるで無理して背伸びしていたところに膝カックンをされたような顔だ。 そして焦ったように長い髪が跳ね上がるほどの勢いで急に下を向く。 「ど、どうしたのよ? 用があって迷惑ならガマ…じゃなかった電話しないけど…」 下を向いたままのこなたの反応がないので不安になってくる。前髪に隠れて顔も見えないし…本当に どうかしたのだろうか? 「いや、そんなわけ――ううん、そんなことないよ。ちゃんと子機と携帯充電しておくね」 下を向きながら、それでもいつもの声で答えてくれたことにホッとする。 「じゃあいつもの時間にかけるね」 「うん…」 やっぱり下を向いたまま。 そんなこなたのことを不審に思いながらも、わたしはこなたの一挙手一投足に一喜一憂する自分に苦笑する。 よくラノベでヒロインなんかが好きな人のことで喜んだり悩んだりする描写を目にするが、その度に不思議に思っていた。 『いや、確かにちょっといいなって人に対してドキドキする気持ちは分からんでもないけど、さすがにそこまではないだろ』 とこんな風に以前のわたしならツッコミを入れていただろう。 でもこなたのとる行動、発する言葉の一つ一つが気にかかり、ドキドキする今の自分の状況を拡大解釈すれば 前よりは理解できるような気がする。その気持ちがどんな感情に由来するのかまではわからないが。 友達?――って確かにそうだけど、もうちょっと深い気がする。 保護者?――ってわたしはこなたの親じゃないし…。 (うーん、これじゃ本当に好きな人が出来たら気疲れして死んじゃうかもしれないわね) …こなたはどうなんだろう。 好きな人とかいるのかな。ネトゲの方に『嫁』がいるって言ってたけど。 もし―――に好きな人が出来たとしても今の調子じゃ気疲れして死んじゃうかもしれないわね。それも わたしに好きな人が出来た時よりも高確率で。 横を歩くこなたをチラリと横目で見る。 まだ下を向いたままか、と言ってもさっきの会話から1分も経っていないけれど。 ふぅ、と軽く息を吐き後ろを見ると、隣のつかさと話をしながら歩いているみゆきと目が合った。 みゆきはわたしに向かってニッコリと笑い、わたしはちょっと後ろめたくなって苦笑いを浮かべる。 つかさがわたしの方を見て、ちょっとすねるような表情をする。 ううっ…ごめんね、別に二人を無視してた訳じゃないんだけど…でもつかさだってみゆきと仲良く話してたじゃない。 …ま、まあそれもこれもこなたが下を向いてるから悪いのよね。まったく今どんな顔してるのよ。 そう思い少し屈む。 やっぱりこなたのことが気になってしまう。 こりゃ、好きな人ができるなんて当分先ね。季節の春が来る以前に、わたしの春もかなり先だろう。 そんなことを思いながら、隣を歩くこなたの表情を下から窺おう――と思ったらいきなりこなたが走りだした。 混乱するわたしを追い抜き、ホームへの分かれ道に向かう上り階段の前に立つ。そこでくるりとこちらを向き―― いきなり走ったせいか顔が真っ赤だ――大声で叫んだ。 「あのさ!!」 うわっ、びっくりした。 よく通るこなたの声に回りの人たちが一斉にこなたに注目する。 そしてその注目はこなたの視線の先にある人物――つまりわたしに集中する。 何をするつもりなんだこいつは…。 「かがみはさ!!コミケと同じだよね!!」 こ、こら公衆の面前でいきなり何を言い出すかと思えば…って?コミケ??? 何を言ってるんですか?こなたさ―― 「夏と冬ばかりで…」 そこでこなたはその次のセリフに備えるように思いっきり息を吸う。 だがその次のセリフをわたしは断固として言わせなかった。 「春が……来ないってかぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」 かつてないわたしの怒号が通路を揺らし、こなたは吐こうとしたであろうセリフとともに息を呑んだ。 「ちょっ、かがみ?!あれ?いや?違っ――てえええええ???!!」 そして何かに気づいたように脱兎の如く階段を上っていく。 さすがに逃げ足は速い。そしてその選択は正解だ。 「ごめんね、みゆき、つかさ。悪いけど先に帰っててくれない?」 わたしは勢いよく後ろを振り向いてみゆきたちに声をかける。 「は、はい…」「う、うん…」 瞬時に二人は異口同音の返答をする。 いいのよ、そんなに怯えなくても。わたしは別に怒ってるわけじゃないから。 ウン、ゼンゼンオコッテナイヨ? でもつかさ、わたしが家に帰れないような事件を起こしたとしても許してね。 そしてみゆき…いつまでも友達でいてね。 ワタシガオコッテイルノハ… 「こなたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!待ちなさぁぁぁぁぁぁい!!!!!」 わたしも全力疾走で階段を駆け上がる。 「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」 階段を上り終わると、悲鳴とともに3・4番ホームの階段に消える青い髪が見えた。 「逃がすかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 テスト頑張ったご褒美あげようかな、と思ったがやっぱりやめた。これから取りあえず『受験』までは かなり厳しく行くことにしよう。 うん、バイトがない時は放課後つきっきりで勉強漬けにしてやる。どうせだから週末は泊り込みで みっちり詰め込んでやる。 …これはこなたのことを思ってのことだから。 そうよ、こなたのためなんだから!! 終 ☆おまけ 「ゆ、ゆきちゃん。私、あんなに怒ったお姉ちゃん見たの初めてだよ…」 驚いた様子で隣に立つ友人に話しかける少女。 「……」 しかしいつもなら優しく返ってくるはずの答えはなかった。 「ゆきちゃん?」 少しだけ不安になったのかもう一度問いかける。 その問いが聞こえなかったように長身の少女はポツリと呟いた。 「…逆、ですよね」 「え?」 「さっきのセリフの続きはきっと『春』ではないんですよね…―――さん」 先ほどまで『誰か』がいたところ――階段の方を遠い目でみながら寂しそうに笑う。 「ゆきちゃん…」 その笑みに少女の胸が引き絞られる。 いつもの彼女の笑みが胸の中の『何か』を柔らかく暖めるのとは違い、彼女が時たま見せるその表情は 少女の『それ』をたまらなく寂しくさせる。 その『何か』にひびが入って壊れてしまうのではと恐ろしくなり、少女は制服の胸の部分を強く握った。 ――痛い。 でも少女には隣でうつむく彼女の方がもっと痛々しい表情をしているように思えた。 まるで胸の中に『何か』の欠片がささっているかのように―― 気がつくと彼女も胸に手をあてていた。 少女は懸命に何かを考え、頭から煙が出るくらい考えぬいた末に―――― ☆おまけのおまけ ピー、ピー、ピー 何かに呼ばれた気がして彼女は我に返った。 (またやってしまいましたか…) 自制しようと心に決めたはずなのに、今日は――いや今日も抑えられなかった。 一人の時ならまだしも、四人でいる時に。 (…いけませんね) そうだ、今は一人ではないのだ。 この間も隣の友人には心配をかけてしまった。 慌てて顔を上げて左右を見るが友人の姿は見えない。 情けない自分に呆れ果て、姉を追っていってしまったのだろうか…? 彼女の瞳が再び蔭る。 その時またかすかに彼女を呼ぶ何かの声が聞こえた。 ピー、ピー、ピー これは呼び声というより――鳴き声? ――いや、そうではないこれは口笛だ。 鹿笛とはかけ離れたさえずりは後ろから聞こえる。 気付かぬうちに頬を伝っていた一筋の滴を慌てて拭き、後ろを振り向く。 そこにはやはり彼女の友人の少女がいた。 少女は目を閉じ、彼女が振り向いたことに気づかないくらい一生懸命に口ばしをすぼめている。 それはどこか、タマゴから孵ったばかりの雛が親鳥を探すような必死さがあった。 その小さなさえずりに心を柔らかくつつまれ、彼女の笑みは自然と優しいものとなる。 「つかささん」 自分の名を呼ぶ声に少女は顔を上げ、一瞬驚いたような顔をした。 しかしすぐに自分に向けられた微笑を見て安心したようにはにかんだ笑みを浮かべる。 弧を描く目からは安堵の気持ちが溢れ出たかのように涙がにじみ、頬に一筋、二筋と線を画く。 「ゆ…、き…ちゃっ…」 その溢れ出す感情をおさえきれないのか、少女は彼女の名を呼ぶがそれは言葉にならない。 彼女はそんな少女にゆっくりと歩み寄り、こわれものを扱うようにやさしく抱きしめた。 それはまるで親鳥が子どもを翼で包むようで――。 「私はここにいますよ」 そう声をかけ雛鳥のアメジスト色の髪をなでると、黄色いリボンがゆっくり揺れた。 了 コメントフォーム 名前 コメント GJ! -- 名無しさん (2022-12-18 22 24 08)
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今日はかがみ・つかさ・みゆきさんがうちに遊びに来ている 一応勉強会という名目で 買ったばかりの漫画をペラペラめくりながら、皆の様子を盗み見る つかさはまじめに勉強をしているようだ…よくみたら寝てるし みゆきさんはなんかよくわからない難しい本をカバンの中から 引っ張り出して読んでいる。 『同性』という文字が見えたような気がするがたぶん気のせいだろう、みゆきさんだし。 かがみは私のアルバムをめくりながら、私の子供の頃の写真を抜き取っていた なにしてんの 「ちょっとトイレ行ってくるね、あと飲み物でも取ってくるよ」 「あ、いってらっしゃいませ」 「ん、悪いわね」 「あ、りがとう…Zzz」 寝たまま返事した、すごいなつかさ 「~♪」 トイレを済ませて、なんとなく鼻歌でハレ晴れを歌いながら 階段をかろやかに降りていく 着地失敗して転んだ…痛い ガラッ 襖を開けてお父さんの様子を見る パソコンの前でうなっている、煮詰まってるみたいだね お茶でも入れてあげるか お盆に、冷蔵庫にあったQooを乗せ…よく見たらGooとか書いてある パクリじゃないか、いまどきに言うとインスパイヤ? そんなことを考えながら、今度はお茶を入れてお父さんの所にトテトテ向かう 「お父さん、はいお茶」 「お、悪いなこなた。入れてくれたのか」 「煮詰まってるようだからこのくらいわね」 「いやぁ、なかなかいいのが出なくてなぁ」 「ふ~ん…まあがんばってね」 任せろと腕を曲げてちからこぶを作る それを横目に見ながらお盆をもって階段を上っていく 「飲み物もってきたよ~…かがみは?」 「お帰りなさい、かがみさんはトイレですよ」 「そう、あ…つかさ起きたんだ」 「うん、なんかいつの間にか寝ちゃってたみたいだね」 「むっふっふ、かわいい寝顔拝見させていただきましたぞ」 「もう、こなちゃん」 そんなやり取りをする私たちを、みゆきさんが笑顔で見守っていた 「かがみ遅いね?」 「本当だね」 「どうしたんでしょうか」 かがみがなかなか戻ってこない、大きい方だったのだろうか そんなことを考えていると ガチャ 「あ、かがみおかえり…ん?」 「ただいま」 なんだか微妙に落ち込んでいるみたいだ、というかなんか濡れてるんだけど …お茶? かがみは私を一瞥した後、自分のカバンを開けて旅行パンフを取り出した 「かがみん、ドイツ行きたいの?」 「へ!?うん。ま、まあね」 何を慌ててるのだろう 「こ、こなたならどこに行きたい?」 「ん?私ならやっぱり妥当にアメリカかな?」 「そうじゃなくて、ドイツ国内でどこに行きたい?」 「へ?…ん~私ドイツあんまり知らないからね、どこでもいいかも」 「じゃあ、勝手に決めても大丈夫ね」 「ん?どゆこと?」 「なんでもないわ」 「……??」 なんかよく話が見えてこないけど… まあいいか 「…のカップルが一番多いところってどこかしら…やっぱり…同士」 なにかぶつぶつ言っているがよく聞こえなかった 「あ、私もちょっとトイレ」 つかさがすくっと立ち上がりそう告げた 「ん、いってら~」 「いってらっしゃい」 「いってらっしゃいませ」 何か一大決心をしたような顔で部屋を出て行くつかさ トイレくらいでそんな顔せんでも というか、かがみは早くお茶を拭くべきだと思う そろそろ勉強するか、そんな気分になった(気のせい)のでテーブルに 数学の教科書とノートを広げてカリカリ(意味もなく)書いていると 「ただいま~」 「あ、おかえりつかさ…?」 「おかえりなさいませ」 「おかえりぃ~」 つかさが茶色い …この双子はいったいなにをやってるんだ トイレに何かいるんだろうか…私が行ったときは何もいなかったけど 「…まあいいか、ねぇみゆきさんちょっと分からないところがあるんだけど」 なんだかよくわからない妄想雑念を頭の隅っこに追いやりみゆきさんに質問を投げかける 「―――あり?」 みゆきさんがいない さっきまで私の隣で、つかさにおかえりを言っていたはずなのに キョロキョロと部屋を見回すが、いないようだ…おっかしいなぁ ふと私の目の前に正座しているつかさと目が合った 「……何、つかさ?」 「へ!?な、なんでもないよこなちゃん」 急に頬を紅潮させて目を背けるつかさ なんですかその恋する女の子的な反応は… というか、つかさは早くコーヒーを拭くべきだと思う 「…はぁ」 深い溜息をつく、今日はなんだか皆の様子がおかしい 「溜息などついて…どうかいたしましたか?」 「!?」 気がついたら隣にみゆきさんがいた 忍者かあなたは…ジャポニズムも大概にしてほしい 「い、いや…なんかみんなの様子がおかしいなっておもって」 私のそんな言葉を合図としていたようにみんなが私の前方に正座し始めた 椅子に座っていたかがみも、その体勢のままジャンプして私の前に正座した 器用だねかがみん 「こなた!!」 「こなちゃん!!」 「こなたさん!!」 3人が同時に私の名前を呼ぶ 「「「……」」」 3人とも黙って互いを睨みつける、どうしたんだろ Gooが気にくわなかったのかな? すると3人は部屋の隅に移動して、作戦会議?らしきものをし始めた ここからではよく聞こえない ※聞こえない部分は皆様の妄想力で補ってください 「…私の方…な…」 「…私が一番…ゃんをうまく扱え…」 「…引き際…切ですよ…」 「…勝…ね」 「…勝負…法は?」 「…体に聞きま…」 不穏な言葉が聞こえた気がする 「…どうす…の?」 「…ないよ」 「…「○○もっとぉ」と言わせ…○の部分に…人がこな…というのは…」 「…それいいかも」 「…まりだね」 「…では…でいきま…」 どうやら終わったようだ 3人がクルリとこちらを向く、目が燃えているもとい萌えている 一歩一歩足並みを揃えてこちらに向かってくる それに合わせて私はあとずさる、そしてベットに突っかかりポフッと座ってしまった 「アッー!!」 なぜかセバスチャンが外を飛んでいる、何でいるんだ 「こなた、ちょっと服脱いでくれる?」 「り、理由は?」 「理由なんてないよこなちゃん」 「そうですね」 理由がないなら服脱がせたりしないだろ 「やだよ」 「「「……」」」 「「「実力行使」」」 「な!?」 無理やり私の服に手をかける3人 「ちょ!!さ、3人とも落ち着いて!!わーなんで服脱がすの!?助けてお父さーーーーーーん!!」 そう叫んだ…はずなのに、唯一頼れる存在である父は助けに来ない その間にも私の服は漫画みたいにポンポン飛んでいく そしてついに私は生まれたままの姿に 「あぅあぅあぅぅ~」 「「「ハァハァハァハァ」」」 3人の目がやばい、獣のようだ いや、獣のほうがまだかわいいかもしれない そう感じるほどに彼女らの目は危険だった 私の手は大事な部分を隠しているので今襲われたら抵抗できないだろう 「やさしく…してね?」 何を考えたのだろう、今の3人に、火に油をぶっかける的な発言をしてしまった 「「「ぶっほぁああぁぁ!!」」」 3人は吐血して膝を地面についた 「こなたぁああぁあぁあああ!!」 「こなちゃああぁぁぁあぁあぁぁああん!!」 「こなたさぁあぁああぁあぁん!!」 3人がルパンみたいなポーズで襲い掛かってきた 私の脳内ではド○クエの戦闘BGMが流れている 「にょぉおおぉわぁああぁあぁぁあ!!」 あっという間に拘束され、全身を弄られる 「ふぁ、や…やめ…んあ!!」 「あ~やわらか~い!!」 「こなちゃんのおしりこなちゃんのおしりこなちゃんのおしり!!」 「こなたさんあなたの肌はまるでシルクのようですね」 こういうのは慣れてない(当然だけど)から、気持ちいいというよりくすぐったかった 「くぅ~~~っ、んは!!」 やばい、このままでは3人の思う壺だ だんだん弄り方が激しくなってくる さらに体中にキスの嵐 「はぁ、はぁ…ん!!…うあ、はぁ」 意識が遠のく…あ… プッツン 「……」 「「「??」」」 バァァアァン 3人は吹き飛ばされた 「な、なんなの!?」 「え?え?」 「こ、これはいったいどういうことでしょう」 こなたの後ろには真っ黒なオーラが漂っている 「…!!」 「こ、こなちゃん?」 「こなたさんの戦闘力が!!測定不能です!!」 みゆきの眼鏡がパリンと割れた、なんだその眼鏡は 「貴様らの血は…何色だあぁああぁぁあぁぁぁああぁあああ!!」 「こ、こなたが壊れたぁあ!?」 「こ、こなちゃん!!私たちが悪かったから!!落ち着いて?ね?」 みゆきの姿はすでになかった 「みゆきがいない!?」 「やっぱりゆきちゃんはSI☆NO☆BIなの!?」 こなたがズン、ズン(ズンドコ♪…すいません)という足音を響かせながらこちらに向かってくる 口からは白い煙が出ている 「コファーコファー」 「と、取り合えず逃げるわよ!!つかさ!!」 「う、うんお姉ちゃん」 「NIGASUKA!!」 瞬動でも使ったかのようなスピードでこちらとの距離を詰めたこなたは2人をいとも簡単に拘束した 「「きーーーーーやーーーーーーー」」 その日 泉家には柊姉妹の喘ぎ声が響いたという 「ご愁傷様ですかがみさん、つかささん」 そういいつつみゆきはその光景をビデオに収めていた ちなみに後日談、そうじろうは数日間こなたに口を聞いてもらえなかったという 自業自得です 【 fin 】 コメントフォーム 名前 コメント gooってwww -- 名無しさん (2012-10-12 18 52 18) すばらしき百合コメディ2部作! -- 名無しさん (2011-04-13 11 02 19) いやぁこのこなたはモードBだろwww 昔だったらV-MAX発動だな(古~っ!!) -- 名無しさん (2010-04-08 00 48 43) 戦闘力数値は、フОーザを超えました……。 -- 名無しさん (2010-03-22 00 59 38) こなたの戦闘力53万!! -- 名無しさん (2010-03-22 00 53 57) キレたこなたに襲われてもいいかなー、と思う自分がいる。 -- 名無しさん (2010-03-21 16 15 44) ズン、ズン(ズンドコ♪…の部分に思わず爆笑。何すんだ作者。 キレたこなた怖ーーー! -- 名有りさん (2009-07-18 17 33 13) 非常に、キャラの壊れぐあいがサイコーでした。 -- 名無しさん (2008-07-31 01 47 05) いや、三人の壊れ具合も凄いけど一番凄いのは こなただな! つか、そうじろう、こなたを助けようぜ! -- 名無しさん (2008-07-21 23 43 59) 結局そうじろうは助けなかったんですね(汗)こなた哀れ(;´Д⊂) -- 名無しさん (2007-07-27 19 10 41)